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Chapter 1 オープニング ― なぜ売上だけでは危ないのか
皆さんこんにちは、タカシです。今日は SaaS 立ち上げの PMF 前指標を扱います。創業初期は売上が立つと前進している気になりますが、実はその数字だけだと危ない。顧客が本当に価値を感じて残るかは、別の数字で見ないと分からないんです。
ミカです。たしかに最初の受注ってうれしいですけど、紹介や創業者の人脈で決まることも多いですよね。今日は『売れた』ではなく『本当に前に進んでいる』をどう見分けるか、そこを知りたいです。
結論から言うと、PMF 前は ARR より継続利用、オンボーディング完了、初回価値到達時間、週次利用頻度、紹介意向、有償継続を優先します。つまり『いくら入ったか』より『誰が残って広がるか』を先に見るわけです。
売上って経営のど真ん中の数字なのに、あえて脇に置くんですね。なんだか逆説的ですけど、創業初期は一部の大きな案件や値引きで、実態以上に調子よく見えることもありそうです。
その通りです。PMF 前指標の役割は、見栄えのいい数字ではなく、次の投資判断やピボット判断に耐える学習を集めることです。今日は、何を追い、何を捨てるべきかを、具体例つきで整理していきましょう。
Chapter 2 基本 ― PMF前は満足度と行動の再現性を見る
First Round は PMF を Satisfaction、Demand、Efficiency の三つで捉えていますが、初期に最優先なのは Satisfaction、つまり少数の顧客が強く必要としている状態です。効率より先に、刺さっているかを確かめる段階なんですね。
なるほど。まだ 5 社とか 10 社の段階で CAC payback を真面目に計算しても、誤差が大きすぎるってことですね。まずは、そのうち何社が本気で使い続けるかを見ろ、という話か。
まさにそこです。OpenView は pre-PMF の定量目安として、B2B なら 50 active accounts、週次 3% のアクティブ成長、6 カ月 retention 20〜40% を『何か見えてきた』ラインとして挙げています。売上規模より利用の厚みなんです。
この 50 active accounts って、単なる登録数じゃなくて、ちゃんと使っている会社数ですよね。名刺交換みたいにアカウントが増えても、誰も戻ってこないなら、それは前進とは呼べないわけだ。
そうです。だから指標は四つに整理すると見やすい。価値到達、習慣化、熱量、有償継続です。初回価値にどれだけ早く届いたか、週次で戻っているか、なくなると困るか、そしてちゃんと金を払い続けるか。この流れで見ると判断がぶれません。
Chapter 3 行動指標 ― オンボ完了、TTFV、週次利用、Retention
最初の束は行動指標です。オンボーディング完了率、time-to-first-value、週次利用頻度、コホート retention。ここで大事なのは、設定が終わったかではなく、顧客の仕事が一歩進んだかを測ることです。
オンボ完了って、つい社内では達成感がありますけど、それだけじゃ危ないんですね。アカウントは作った、設定もした、でも現場では一回も使われていない、みたいなことは普通に起きそうです。
その危険を示すのが Amplitude の 2025 年分析です。7 日目 retention が 7% に届く製品は activation 上位 25% に入り、その上位群の 69% が 3 カ月後も上位 retention 群でした。最初の 1 週間が、その後をかなり予告してしまうんです。
つまり『3 カ月待ってから評価しよう』では遅いんですね。最初の 7 日で価値に届かないと、その後にどれだけ機能を足しても取り返しにくい。新入社員の最初の 1 週間みたいなものかもしれません。
いいたとえです。だから経営者は、価値到達イベントを一つ決め、その到達率と到達までの日数を毎週追うべきです。さらに、誰が翌週も戻り、どの機能を再利用したかまで見れば、ただの登録と本当の習慣化を分けられます。
Chapter 4 熱量指標 ― 非常に困る、紹介、横展開
次は熱量です。Superhuman は『このプロダクトが使えなくなったら非常に困るか』という質問への回答率を最重要指標にしました。2017 年夏に 22% だった PMF スコアは、3 四半期で 58% まで改善しました。売上ではなく熱量を経営指標に置いたわけです。
22% から 58% って、かなり大きいですね。しかも面白いのは、全員に広げる前に『誰が本当に愛しているか』を絞り込んだことですよね。平均点を上げるより、濃い顧客を見つける発想なんだ。
その通りです。Mixpanel も、どんな行動が後の retention に効くかを見て、チームのダッシュボードを見て発見を共有したユーザーは、6 カ月 retention が 3 倍改善しました。熱量はアンケートだけでなく、行動の濃さでも測れるんです。
紹介や横展開も、この熱量の一部ですね。頼んでもいないのに他部署へ広げたいと言い出すとか、知り合いに勧めるとか。そういう動きが出てきたら、売上表より先に『あ、引っ張られ始めた』と分かりそうです。
ええ。SaaStr も early-stage B2B SaaS の PMF シグナルとして、口コミ紹介、処理しきれない inbound、強い retention を挙げています。創業者が毎回押し込まなくても前に進み始めたら、それは市場からの pull が出てきた証拠です。
Chapter 5 経営判断 ― 何を捨て、何を残すか
最後に、PMF 前に捨てたい数字をはっきりさせましょう。ARR の総額、総リード数、PV、商談件数だけで前進度を判断するのは危険です。創業者の営業力や一時的な値引きで作れてしまうからです。補助指標には使えても、主役には向きません。
逆に主役に置くのは、週次アクティブ、価値到達、30 日継続、紹介発生、有償継続、このあたりですね。見栄えは地味でも、ここが伸びていれば『顧客が前に進んでいる』と判断しやすい。かなり現実的なダッシュボードです。
その理解で大丈夫です。Alma も retention、close rate、time to sale、utilization、満足度を束で見て、ピボットの確信を持ちました。皆さんも今週、価値到達イベントを一つ決めて、ARR より前に見る数字を入れ替えてみてください。それが PMF への最短距離です。