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Episode 195

その困りごと、いくらですか ― SaaS営業の課題定量化

12分 5チャプター 日本語
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スクリプト

Chapter 1

オープニング ― 痛いだけでは予算はつかない

タカシ

今日は SaaS 営業の課題定量化です。顧客が困っていること自体は本物でも、それが工数、失注、売上機会、リスクの数字に変わっていなければ、案件は優先されません。痛みを予算言語へ翻訳する回ですね。

ミカ

分かります。商談で相手が大変そうに話してくれても、最後に社内で止まることってありますよね。共感はあるのに稟議が進まない。その差が、数字になっているかどうかなんですか。

タカシ

その通りです。複雑な B2B SaaS 商談では、現場担当者の困りごとを、部門長や CFO が判断できる材料に変えないと前へ進みません。つまり課題定量化は、提案書の最後に付けるおまけではなく、商談の骨格なんです。

ミカ

なるほど。機能説明より先に、今のやり方で年間どれだけ時間やお金が失われているかを一緒に見つける必要があるわけですね。ちょっとシビアですが、経営の会話になってきました。

Chapter 2

なぜ必要か ― Pain と Metrics が urgency を生む

タカシ

MEDDICC は Metrics を価値の定量指標と捉え、Economic、Efficiency、Risk の三つで整理します。さらに Pain では、問題の存在だけでなく、その影響と放置コストまで顧客が理解しないと urgency は生まれないとしています。

ミカ

問題があります、だけだと他の案件に負けるけれど、このままだと毎月これだけ損をする、と分かった瞬間に優先順位が上がるわけですね。たしかに人は痛みが数字になると急に真顔になります。

タカシ

ALL STAR SAAS FUND で Sansan の山田氏も、いきなり売上増やコスト減を盛るのではなく、まず顧客価値のシナリオを事業貢献数値に置き換えるべきだと言っています。中間指標を見つけるから、納得できるロジックになるんです。

ミカ

便利です、だけでは弱いけれど、人脈活用数が増えるとか、オフラインリードが増えるなら会議に持ち込みやすいですね。抽象的なベネフィットを、社内で説明できる数字にするのが営業の仕事なんだ。

Chapter 3

具体例 ― 定量化できた商談は進み方が変わる

タカシ

Gong の Allbound 事例は象徴的です。以前は営業が timeline や budget、key pain points、business case を十分に押さえられず、平均 sales cycle は九十二日でした。そこを早期に確認するよう変えたら、十六日まで縮みました。

ミカ

九十二日が十六日ですか。それ、受注率より先にキャッシュの流れが変わりますね。しかも単に急かしたのではなく、課題と business case を早めに固めたから前倒しできた、というのが大事そうです。

タカシ

買い手側の事例でも同じです。SmartHR の導入事例では平均六五から七〇パーセントの工数削減、freee の事例では請求関連で月十時間削減、支出管理業務の割合を約七〇パーセント削減といった数字が出ています。これがあると投資判断しやすい。

ミカ

たしかに、便利そうから採用計画や人員配置の話に一気につながりますね。導入すると楽になります、ではなく、労務一人で回せるとか、欠員補充なしで伸びに耐えられると聞くと、経営の会話になります。

Chapter 4

どう作るか ― 工数を経営インパクトへ変換する

タカシ

定量化の起点は難しくありません。まず現状件数、一件あたり工数、対象人数、年間頻度を聞きます。Sansan の記事でも、一人が毎日三十分削減できれば、五人チームで年間六百時間、時給三千円なら約百八十万円相当だと説明しています。

ミカ

おお、式にすると急に扱いやすいですね。しかもここで終わらず、その六百時間で何を前倒しできるのか、採用を止められるのか、失注を減らせるのかまで聞ければ、工数削減が経営課題につながります。

タカシ

そうです。Dock も business case には time savings、cost savings、revenue gains が必要だと整理しています。営業がやるべきなのは、顧客の困りごとを、 champion が社内でそのまま読める投資資料に変えることなんです。

ミカ

逆に怖いのは、営業が勝手に理想値を置いてしまうことですね。顧客がその数字を自分事だと認めなければ、見栄えのいい表が一枚増えるだけ。読み合わせまで含めて一緒に作らないと意味がないわけか。

Chapter 5

まとめ ― まず四つの列で聞き始める

タカシ

明日からの実務はシンプルです。discovery で出た課題を、時間、金額、件数、リスクの四列で必ず置き直すこと。次に、現状件数かける工数かける人数かける頻度でまず一次試算を作る。ここまでで会話の質が変わります。

ミカ

共感メモで終わらせず、四列で整理するだけでも全然違いそうですね。しかも、その数字が本当に顧客にとって重要か、誰がその痛みを一番強く感じるかを確認する。ちょっとした質問の差で商談の重みが変わりそうです。

タカシ

課題定量化の本質は、派手な ROI シートを作ることではありません。顧客の曖昧な不満を、社内で説明できる意思決定材料へ変えることです。数字になった pain は urgency を生み、案件を前へ動かします。

ミカ

今日は、困りごとを数字にすることが、そのまま稟議支援になると分かりました。皆さんも次の商談で、相手の課題を時間、金額、件数、リスクのどれで語れるか、ぜひ試してみてください。それではまた次回。