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Episode 209

広く狙うほど受注が落ちる ― SaaSマーケのICPセグメンテーション

12分 5チャプター 日本語
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スクリプト

Chapter 1

オープニング

タカシ

今日は SaaS マーケティングの ICP セグメンテーションです。FORCAS は狙う企業を 600 社に絞ったところ、受注率が倍になり、リードタイムが半分になりました。広く狙うほど伸びる、とは限らないんです。

ミカ

えっ、絞ったのに受注率が倍ですか。普通はターゲットを広げたほうが案件が増えそうに見えるのに、逆なんですね。ICP って、結局どういう意味なんでしょう。

タカシ

ICP は Ideal Customer Profile、つまり最も勝ちやすく、続きやすく、広がりやすい顧客像です。SaaS では『誰でも買えそう』より、『誰なら回収できるか』を先に決めるほうが経営に効きます。

ミカ

なるほど。たくさん集める話じゃなくて、いい顧客を選ぶ話なんですね。今日は、どうやってその顧客像を見つけて、現場で使える形にするのかを知りたいです。

Chapter 2

ICPはなぜ経営論点なのか

タカシ

SaaS では CAC を先に払って、月額課金で回収します。ALL STAR SAAS FUND も Unit Economics を 3 から 5 以上に保つのが健全な目安だと整理しています。だから、誰を取るかのズレはそのまま経営のズレになります。

ミカ

同じ資料請求でも、あとで伸びる会社とすぐ解約する会社が混ざっていたら、リード数だけ見ても意味が薄いわけですね。マーケの数字と経営の数字をつなぐ入口が ICP なんだ。

タカシ

その通りです。HubSpot も ICP は業種や従業員規模だけでなく、課題、購買プロセス、意思決定者、成功条件まで含めて作り、四半期ごとに更新すべきだとしています。固定された名簿ではなく、学習する仮説なんです。

ミカ

ペルソナとの違いもそこですね。ペルソナは『誰に話すか』で、ICP は『どの会社を追うか』。順番を間違えると、言い方は上手でも、そもそも勝ちにくい相手に予算を使ってしまう。

Chapter 3

絞るほど伸びた実例

タカシ

まず FORCAS です。SaaS ベンダー 250 社と HR 関連 350 社、合計 600 社に狙いを絞って ABM に切り替えた結果、商談数を大きく落とさずに受注率が倍、リードタイムが半分になりました。受注企業の 7 割はターゲット企業です。

ミカ

気合いで量を追うより、『勝てる 600 社』を決めたほうが速かったんですね。営業もマーケも、何を捨てるかが決まると急に強くなる感じがします。

タカシ

HubSpot の Make Influence も面白いです。利用データと CRM を突き合わせて ICP を見直した結果、チームを 28 人から 11 人へ絞っても 4 から 5 倍の仕事を回せるようになり、価格も 6 倍まで引き上げられたと語っています。

ミカ

ICP って広告効率の話だけじゃないんですね。『この顧客なら高く売っても価値が伝わる』が分かると、単価まで変えられる。マーケが価格戦略にも効くのは意外でした。

Chapter 4

静的な属性で終わらせない

タカシ

最近の SaaS では、ICP に購買意図データを重ねるのが重要です。6sense の Reachdesk 事例では、買いシグナルを起点に優先順位をつけた結果、受注率が 35 パーセント、主要アカウントから営業受け入れ案件への転換率が 65 パーセントでした。

ミカ

なるほど。『この会社は理想顧客っぽい』だけじゃなくて、『今まさに動いている』まで見るんですね。同じ ICP でも、タイミングを外すとただの立派なリストで終わってしまいそうです。

タカシ

その通りです。よくある失敗は五つあります。TAM を広く取りすぎる、従業員規模だけで切る、一度作って更新しない、営業とマーケで別の顧客像を見る、そして除外条件を決めない。この五つで、現場は必ずぶれます。

ミカ

除外条件、大事ですね。『誰を追うか』は会議で決めても、『誰を捨てるか』を決めないと、結局みんな目の前の問い合わせを全部追ってしまう。忙しいのに成果が薄い状態になりそうです。

Chapter 5

明日からの使い方

タカシ

明日からやるなら四つです。第一に、直近 12 カ月の顧客を受注単価、継続率、拡張率、導入難易度で並べる。第二に、上位 20 から 30 社の共通点を言語化する。第三に、営業と CS も交えて月次で見直すことです。

ミカ

いきなり理想論を書くんじゃなくて、まず今いる顧客から逆算するんですね。しかも受注しやすさだけじゃなく、続きやすさと広がりやすさまで見る。SaaS らしい見方です。

タカシ

最後に、キャンペーン、スコアリング、ABM リスト、営業優先順位を同じ ICP 定義にそろえること。ICP はスライド一枚で終わる概念ではなく、会社全体の集中力をそろえる運用です。ここが整うと、マーケ費はぐっと強くなります。

ミカ

今日は、ICP セグメンテーションはターゲットを狭める話ではなく、勝てる顧客に経営資源を寄せる話だと分かりました。皆さんもまず、今の顧客の中で『本当に増やしたい会社』を 20 社だけ挙げてみてください。それではまた次回。