スクリプト
Chapter 1 オープニング
今日は SaaS マーケティングのポジショニングです。似た機能でも、値引き競争に入る会社と、しっかり選ばれる会社があります。その差は機能数よりも『何として理解されるか』の設計にあります。
ポジショニングって、キャッチコピーを考える話だと思っていました。ホームページの一番上に書く、あのカッコいい一文を作ることとは違うんですか。
そこが誤解されやすいんです。ポジショニングはコピーの前に、顧客が何と比べて、なぜ今動くべきかを決める作業です。つまり、比較ルールそのものを設計することなんですね。
なるほど。言い方を飾るより先に、どの土俵で戦うかを決める話なんですね。今日は、SaaS マーケでそれがどう売上に効くのかを知りたいです。
Chapter 2 ポジショニングの本質
April Dunford は、まず『自社がなければ顧客は何をするか』を考えよと言います。相手は競合 SaaS だけではなく、Excel、手作業、外注、既存システム、そして何もしないも含まれます。
何もしない、も競合なんですね。たしかに BtoB SaaS って、『困っているけど今期は動かない』で止まる案件、すごく多そうです。
実際、enterprise software では案件の 25 パーセントが no decision に流れるとされています。だからポジショニングは、他社に勝つ説明だけでなく、現状維持に勝つ説明まで含まないと弱いんです。
比較表を磨く前に、『なぜ今変えるのか』を言えないと案件が動かないわけですね。これ、マーケだけじゃなく営業にもかなり効きそうです。
Chapter 3 市場の文脈を取った会社は強い
Linear は好例です。単なる課題管理ツールではなく、『見えなくなった開発業務を可視化し直す基盤』として売っています。導入企業で reported issues が 2 倍、issue 作成者が 5 倍に増えたと示しています。
機能数を自慢するんじゃなくて、『今のツールだと仕事が記録されていない』という痛みを突いているんですね。現状維持の不便さを先に見せているのが面白いです。
しかも Oscar は 600 人のエンジニアを 1 カ月で Jira から移行したと紹介されています。つまり『理想論ではなく大規模でも切り替えられる』という証拠まで一緒に見せているんです。
証拠の出し方まで含めてポジショニングなんですね。言葉だけでなく、どんな実績を前に出すかで『本当にそう見えるか』が決まるんだなあ。
Chapter 4 カテゴリと成果の見せ方
Vanta も面白いです。WorkJam は Vanta 導入後、compliance checks を週 1 時間に短縮し、vendor risk management では年間 100 時間超を削減しました。しかも Trust Center を sales tool として使っています。
守りのセキュリティを、『受注を前に進める材料』として見せているんですね。同じ機能でも、バックオフィス用に見えるか営業武器に見えるかで、印象が全然変わります。
カテゴリの取り方も重要です。PagerDuty は alerting tool ではなく digital operations management と再定義し、Gong も revenue intelligence platform から revenue AI operating system へ進化したと打ち出しました。
なるほど。名前を変えただけではなく、『どの予算で検討されるか』『どの会議で話されるか』まで変えにいっているわけですね。カテゴリ設計って、かなり経営判断です。
Chapter 5 よくある失敗と明日からの実践
失敗は典型的です。機能一覧をそのまま訴求する、実商談に出ない幽霊競合を追う、no decision を軽視する、まだ早いのに新カテゴリを作る、そして LP と営業で違う話をする。この五つです。
確かに、サイトでは AI って言っているのに、営業では効率化、導入後は運用統制を強調する会社ってありますよね。受注前後で期待値がずれたら、継続率まで傷みそうです。
まずやるなら、直近 10 件の失注や停滞案件を、競合 SaaS、Excel や手作業、現状維持、内製に分けて見てください。そのうえで『誰向けの何で、何が変わるか』を一文でそろえる。ここが出発点です。
今日は、ポジショニングは言葉遊びではなく、比較の相手と勝ち筋を決める経営設計だと分かりました。皆さんもまず、最近止まった案件が本当は何に負けたのかを書き出してみてください。それではまた次回。