スクリプト
Chapter 1 オープニング
今日は SaaS マーケティングのカテゴリー設計です。新しい言葉を作れば勝てると思われがちですが、実際はどの市場文脈で理解してもらうかを間違えると、良い製品でも shortlist に入りません。
カテゴリー設計って、ネーミングの話とは違うんですか。なんとなく会議室でカッコいい呼び名を決める作業を想像していました。
そこが誤解されやすいところです。カテゴリは名前そのものより、何と比較されるか、誰の予算で買われるか、どんな評価基準で見られるかを決める市場の入口なんです。
なるほど。つまり呼び名を変えるだけじゃなくて、お客さんの頭の中の棚をどこに置くかを決める話なんですね。かなり経営に近いです。
Chapter 2 既存カテゴリで勝つか、新カテゴリを作るか
ここで大事なのは、新カテゴリづくりが常に正解ではないことです。April Dunford は、新しいカテゴリを作るなら、まずその言葉自体を顧客の頭の中で意味あるものにしなければならず、教育コストがかかると指摘しています。
たしかに、聞いたことのない言葉だと、すごそうより先に、で結局何のソフトなのってなりますよね。営業も毎回一から説明になりそうです。
そうなんです。同氏は、過去5年間に上場したテック企業の 90 パーセントが既存市場の中で位置づけられていたとも述べています。Salesforce や Qualtrics でさえ、勢いがつくまでは既存カテゴリを足場にしていました。
新カテゴリを名乗るのは、まず売れてからでも遅くないわけですね。最初は理解を早めること、あとから枠組みを塗り替えること、順番が大事だと。
Chapter 3 強いカテゴリは何を変えるのか
OpenView は、カテゴリ設計は今のプロダクト説明だけでなく、将来どんな会社になりたいかを市場に結びつける戦略だと説明しています。顧客が毎回『これは何系ですか』と聞くなら、カテゴリの棚が定まっていないサインです。
その状態だと、マーケの流入はあっても商談で失速しそうです。比較対象も予算も決まらないなら、社内で前に進めにくいですもんね。
まさにそこです。カテゴリが決まると、顧客は代替手段を整理でき、営業は何と比較されるかを読める。さらにマーケは検索語や事例の出し方をそろえやすくなり、会社全体の説明コストが下がります。
つまりカテゴリ設計って、ブランドの見栄えを整える話じゃなくて、パイプラインの摩擦を減らす設計なんですね。地味そうで、かなり効きます。
Chapter 4 SaaS企業の具体例
HubSpot は象徴的です。創業者は、買い手が広告で中断されるより役立つ情報を求める変化を見て、2006 年に inbound marketing の文脈で会社を立ち上げました。現在は公式サイトで 28万8千顧客と示しています。
単に言葉を作っただけじゃなくて、教育コンテンツや認定やイベントまで積み上げて、そのカテゴリごと育てた感じですね。市場づくりまでやっている。
Databook も分かりやすいです。もともとは customer intelligence platform と名乗っていましたが広すぎて伝わらず、Strategic Relationship Management へ再設計したところ、サイトの conversion が 67 パーセント増え、inbound leads は 10 倍になりました。
それは大きいですね。カテゴリが合うと説明が通るだけじゃなくて、商談の質まで変わる。マーケの言葉選びが売上に直結しているのがよく分かります。
Qualtrics も同じです。初期は survey software の理解を足場にしつつ、後から Experience Management へ市場を広げました。公式発表では 2022 年通期売上が 14.586 億ドル、サブスク売上が 12.237 億ドルです。勢いを作ってからカテゴリを塗り替えた好例ですね。
Chapter 5 失敗パターンと明日からの実践
失敗は典型的です。ネーミング会議で終わる、早すぎる新カテゴリ創造、製品実態より未来像を盛りすぎる、社内で定義がばらばら、そして頻繁に言い換える。この五つが多いですね。
まずは直近の商談を見て、お客さんが何と比較し、最初に何者だと理解したかを確認するのが良さそうです。自社が思っているカテゴリと市場の受け取りがズレているかもしれないですし。
その通りです。既存カテゴリで鋭く勝つのか、新カテゴリを育てるのかをまず決めてください。そして予算の持ち主、比較対象、必要な証拠を一枚でそろえる。カテゴリー設計は、言葉遊びではなく経営の配線です。それではまた次回。