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Episode 234

会議を開くだけでは更新は進まない ― SaaS CS の QBR/EBR

12分 5チャプター 日本語
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スクリプト

Chapter 1

オープニング

タカシ

今日は SaaS CS の QBR と EBR です。Benchmarkit と Gainsight の Customer Success Index 2022 では、顧客管理で最も使われる道具の上位が success plan 63 パーセント、QBR と EBR 62 パーセントでした。つまり継続売上を守る中核運営なんですね。

ミカ

でも正直、QBR って『四半期に一回スライドを見せる会』みたいに扱われがちですよね。忙しいのに準備が重くて、終わっても何が進んだのか曖昧、みたいな。

タカシ

そこが一番の落とし穴です。QBR も EBR も、本来は報告会ではなく価値の再定義と次の合意形成の場です。更新直前に慌てないために、四半期ごとに『成果が出たのか、次に何を変えるのか』をそろえるわけです。

ミカ

なるほど。契約更新のためのイベントというより、更新が自然に起こる状態を途中で作り続ける会議なんですね。今日は QBR と EBR の違いも知りたいです。

Chapter 2

QBR と EBR は何が違うのか

タカシ

Gainsight は、QBR を四半期ごとの戦略レビュー、EBR を年次または半期の経営層レビューとして分けています。QBR は現場責任者や利用部門と、進捗、ROI、次四半期の目標を確認する場。EBR は役員層と、事業成果や投資判断を話す場です。

ミカ

同じレビューでも、相手と時間軸が違うんですね。現場には『どこが詰まり、次の四半期に何を変えるか』、役員には『この投資が事業にどう効き、次にどこへ広げるか』を話す、と。

タカシ

その通りです。だから資料も同じにしてはいけません。現場向けの利用詳細を役員に延々見せても刺さらないし、逆に抽象的な経営話だけを現場にしても実行が進まない。audience ごとに論点を分ける必要があります。

ミカ

一つの資料で全員を満足させようとして、結局みんな退屈するパターンですね。学校の全校集会みたいに長いけど、自分ごとにならないやつです。

Chapter 3

レビューで何を話すべきか

タカシ

QBR の核は四つです。前回合意した目標に対する進捗、事業価値を示す ROI、今の阻害要因、そして次四半期の共同目標。Planhat も、進捗確認、success plan との照合、ROI の提示、次の行動合意までを一連でやるべきだと整理しています。

ミカ

つまり『最近こういう機能が出ました』から始めるのではなく、『前回約束した成果はどうだったか』から入るんですね。会議の主語がプロダクトではなく顧客成果になる。

タカシ

はい。EBR ではさらに、顧客の今の経営優先課題に引き直して語る必要があります。Gainsight は、事前に success plan を見直し、必要なら stakeholder へ短いヒアリングや survey をして、経営陣が何を重要視しているかを確認しておけと言っています。

ミカ

準備なしで役員に会うのは危ないですね。相手は機能一覧を聞きたいわけじゃなくて、『で、うちの事業に何をもたらしたの』を短く知りたいはずですし。

タカシ

その通りです。QBR も EBR も、最後は必ず next step と owner を残すこと。会議で盛り上がっても、誰がいつまでに何をやるかを決めなければ前進しません。レビューは議事録ではなく、次の四半期の共同経営計画なんです。

Chapter 4

うまく回る会社と失敗する会社

タカシ

Gainsight の事例では、Singular は関係性データや要約の自動化で準備負荷を下げ、平均月次 QBR 数を 2 倍に増やしました。重要なのは、CSM が情報集めから解放され、顧客との戦略会話に時間を使えるようになったことです。

ミカ

QBR が増えたというより、ちゃんと中身のある QBR を回せるようになった感じですね。準備が重すぎると、会議そのものが目的化してしまいそうです。

タカシ

Navattic も参考になります。Vitally で QBR と renewal process を管理した結果、2023 年の前半と後半を比べて monthly churn が 20 パーセント低下しました。レビューを単発イベントで終わらせず、更新運営と一つの流れにしたことが効いています。

ミカ

逆に失敗は分かりやすいですね。三十枚のきれいな deck を作ったのに、前回の約束に戻らない。参加者もずれている。最後に次回日程も action owner も決まらない。これだと会議だけ立派です。

タカシ

まさにそれです。Planhat も renewal playbook で、Day 90 の health check、Day 60 の value realization QBR、Day 30 の commercial conversation と分けています。値段交渉の前に価値を証明しないと、最後は価格の話しか残りません。

Chapter 5

明日からの実践

ミカ

では、経営者や CS リーダーが明日から変えるなら、どこから手をつけるのがいいですか。会議の質を上げたいのに、現場は準備工数で疲れているケースが多そうです。

タカシ

まず顧客セグメントごとに、QBR と EBR の対象者、頻度、必須議題を分けてください。次に、冒頭一ページで前回目標、今回の成果、次の提案を要約する。さらに会議後は success plan、health score、renewal forecast を同日に更新する。この三点でかなり変わります。

ミカ

なるほど。レビュー資料を豪華にするより、前回の約束に戻ること、相手に合わせて論点を変えること、終わったら運用台帳へ戻すこと。この流れが大事なんですね。

タカシ

その通りです。QBR と EBR は会議術ではなく、継続売上を作る経営オペレーションです。皆さんも次の四半期レビュー前に、『この資料は成果と次の合意を生むか、それとも報告で終わるか』を一度点検してみてください。それではまた次回。