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Chapter 1 オープニング ― 70事業を捨てて1000事業を始めた男
皆さんこんにちは、タカシです。今日のテーマは「選択と集中」。経営の世界で最も有名な戦略の一つなんですが、実はこの言葉、多くの人が誤解しているんです。
ミカです。選択と集中って、要は事業を絞るってことですよね?よく聞く言葉ですけど、誤解ってどういうことですか?
いきなり驚きの事実をお伝えすると、この戦略を世界に広めたGEのジャック・ウェルチ。彼はCEO時代に約70の事業から撤退した一方で、なんと約1000もの新事業に着手しているんです。
え、1000!?事業を絞るどころか、めちゃくちゃ増やしてるじゃないですか。それで選択と集中って言えるんですか?
そうなんです。実は選択と集中の本質は「事業を減らすこと」じゃなくて、「勝てる場所を選んで、そこに全力で張る」ということなんですね。今日はこの戦略の本当の意味と、成功・失敗の実例を見ていきましょう。
Chapter 2 選択と集中の基本 ― ドラッカーからウェルチへ
まず基本からいきましょう。選択と集中という考え方は、1980年代にピーター・ドラッカーが提唱しました。経営学の父と呼ばれる人物ですね。限られた資源を最も競争力のある事業に集中投下しなさい、という教えです。
ドラッカーさん、経営の本でよく名前が出てきますよね。でも「限られた資源」って、大企業にはたくさん資源がありそうですけど、それでも集中が必要なんですか?
いい質問ですね。実はどんな大企業でも資源は有限なんです。たとえばGEは当時、家電から航空エンジン、金融まで多角化していて、どの事業も中途半端になりかけていた。そこでウェルチが打ち出したのが有名な「ナンバー1、ナンバー2戦略」です。
ナンバー1、ナンバー2戦略?それってどういう意味ですか?
シンプルです。「市場で1位か2位になれない事業からは撤退する」という基準。3位以下の事業は、立て直すか、それが無理なら売却か閉鎖する。この明快な判断基準のおかげで、GEは売上を6.3倍、利益を6.7倍にまで成長させました。
6倍以上!それはすごいですね。でも1位か2位って、すごく厳しい基準ですよね。社内から反発はなかったんですか?
もちろんありました。自分の部門が売却されるわけですから。でもウェルチが優れていたのは、基準が誰にでもわかるほどシンプルだったこと。「1位か2位か」、この問いにイエスかノーかで答えられる。曖昧さがないから、組織全体が同じ方向を向けたんです。
Chapter 3 成功と失敗の分かれ目 ― キヤノンと東芝
ここからは日本企業の事例を見てみましょう。まずは成功例のキヤノン。バブル崩壊後、キヤノンは赤字だったパソコン事業からきっぱり撤退しました。そして経営資源をプリンター、複写機、デジタルカメラに集中させたんです。
へえ、キヤノンってパソコンも作ってたんですか!それは知らなかったです。撤退する判断って、当時は相当勇気がいったでしょうね。
そうですね。でもその結果、集中した映像機器分野で世界トップクラスのシェアを獲得できた。これがまさに選択と集中の成功パターンです。自社の強みがある領域を見極めて、そこに全力投球した。
なるほど。じゃあ逆に失敗した例もあるんですか?
残念ながらあります。東芝のケースです。2000年代に東芝は半導体と原子力発電という2つの事業に集中しました。どちらも当時は成長が期待されていた分野です。
半導体と原子力、たしかに当時は注目の分野でしたよね。それがどうして失敗に?
2008年のリーマンショックで半導体の需要が急落。さらに2011年の福島原発事故で原子力事業も暗転しました。集中していた2本柱が両方とも折れてしまった。外部環境の激変に対応できなかったんです。
うわあ、それは厳しいですね...。集中すること自体がリスクになるってことですか?皆さんの会社でも心当たりがあるかもしれませんが、一つの事業に頼りすぎるのは怖いですよね。
そこが大事なポイントです。キヤノンはプリンター・複写機・カメラと、関連性のある複数の分野に集中した。東芝は半導体と原子力という全く異なる2分野に集中した。リスク分散の観点が違ったんですね。集中先が1つや2つだけだと、当たりはずれが大きくなりすぎるんです。
Chapter 4 よくある失敗パターンと実践のコツ
ここからは、経営者が選択と集中で陥りがちな失敗パターンを紹介します。一番多いのが、「捨てることへの恐怖で中途半端になる」パターンです。
ああ、それはわかります!自分が経営者だったら、せっかく育てた事業を手放すのは辛いですよね。社員の雇用もありますし。
その気持ちはよくわかります。でも結局どの事業も少しずつ残してしまうと、どこにも集中できない。全部が中途半端になって、じわじわと体力を削られていく。これが一番怖いパターンなんです。
なるほど。他にも失敗パターンってありますか?
もう一つ多いのが、市場分析をせずに「好きな事業」を選んでしまうこと。経営者の思い入れだけで判断して、市場の成長性や競合の状況を見ていない。それから、一度決めたら見直さないのもダメ。市場は常に変化しますから、四半期ごとに集中先が正しいか検証する仕組みが必要です。
定期的な見直しが大事なんですね。でも具体的に、まず何から始めればいいんでしょう?いきなり「事業を捨てろ」って言われても難しいですよね。
まずは自社の事業やプロダクトを全部一覧にして、それぞれの収益性・成長性・競争優位性を3段階で評価してみてください。そしてウェルチのように「市場で1位か2位になれるか」という基準で仕分けする。これだけでも、どこに集中すべきかが見えてきます。
3段階評価と1位2位の基準。シンプルでわかりやすいですね。ぜひ自分の事業に当てはめて考えてみてほしいです。
Chapter 5 クロージング ― 「やらない」を決める勇気
今日のまとめです。選択と集中の本質は「事業を減らす」ことではなく、「勝てる場所を見極めて、そこに全力を注ぐ」こと。ウェルチが70事業を捨てつつ1000事業を始めたように、攻めの戦略なんです。
今日一番印象に残ったのは、「やらないことを決める勇気が会社を強くする」ということですね。キヤノンの思い切った撤退と集中が成功を生んだ話はすごく納得できました。
リスナーの皆さんへのアクションとしては、まず自社の事業を一覧にして収益性と成長性で評価すること。そして四半期ごとに見直す仕組みを作ること。この2つから始めてみてください。
今日も勉強になりました!次回もお楽しみに。それでは皆さん、また次のエピソードでお会いしましょう。