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Chapter 1 オープニング ── あなたの会社、月いくら売れば赤字にならない?
みなさんこんにちは、タカシです。今日のテーマは損益分岐点。英語ではBreak Even Pointと言います。経営者なら絶対に知っておくべき数字なんですが、ここで一つ質問です。みなさんの会社は月にいくら売れば赤字にならないか、即答できますか?
こんにちは、ミカです。うーん、即答と言われると自信ないですね。なんとなく「これくらい売れてれば大丈夫かな」くらいの感覚で。それって実はマズいんですか?
実はかなりマズいです。驚くべきデータがあるんですが、中小企業の経営者のうち、自社の損益分岐点を正確に把握していない方がかなり多い。感覚経営と数字経営の分かれ目が、まさにこの損益分岐点なんです。
感覚と数字の分かれ目、ですか。それは怖いですね。今日は損益分岐点をしっかり理解できるようになりたいです!
はい、今日は損益分岐点の基本的な考え方から、実際の計算方法、そして経営にどう活かすかまで一緒に見ていきましょう。これを聞き終わったら、ご自身の事業でも計算できるようになりますよ。
Chapter 2 損益分岐点の基本 ── 固定費と変動費の区別がすべての出発点
損益分岐点を理解するには、まず会社の費用を2つに分ける必要があります。「固定費」と「変動費」です。ミカさん、この2つの違いはわかりますか?
えーと、固定費はお客さんが来ても来なくてもかかるお金で、変動費は売上に応じて増えるお金...ですよね?家賃は固定費で、材料費は変動費とか。
完璧です。固定費は家賃、正社員の給与、保険料、減価償却費など、売上がゼロでも発生する費用。変動費は原材料費、外注費、販売手数料など、売上に連動して増減する費用です。この区分けが損益分岐点計算の土台になります。
なるほど。でもパートさんの人件費とか、微妙なものもありますよね?忙しい時だけシフトを増やすとか。
いい質問ですね。実はここが多くの経営者がつまずくポイントなんです。パートやアルバイトの人件費、残業代は変動費的に扱う方が実態に近い。この区分が曖昧だと計算結果がずれてしまう。完璧に分けられなくても、より実態に近い分け方を意識することが大切です。
なるほど、完璧じゃなくても「より実態に近く」が大事なんですね。で、その固定費と変動費がわかったら、損益分岐点はどう計算するんですか?
計算式はシンプルです。損益分岐点売上高イコール、固定費割る括弧1マイナス変動費率、括弧閉じ。変動費率は変動費を売上高で割ったものです。例えば売上1,000万円に対して変動費が400万円なら変動費率は40%、つまり0.4ですね。
えーと...固定費を、1マイナス変動費率で割る。ちょっと数式だけだとピンとこないんですが、具体的な数字で説明してもらえますか?
もちろん。ラーメン屋さんで考えましょう。1杯1,000円、材料費が400円で変動費率は40%。家賃や人件費などの固定費が月60万円。この場合、損益分岐点売上高は60万円割る0.6で100万円。つまり月に1,000杯、1日あたり約33杯売れば、ちょうど利益ゼロです。
あっ、なるほど!1日33杯がギリギリのラインってことですね。それ以下だと赤字。でも33杯じゃ利益ゼロですよね?実際にはもっと売らないとダメですよね?
その通り。損益分岐点はあくまで利益ゼロのラインです。例えば月20万円の利益を出したければ、固定費プラス目標利益で80万円を0.6で割って約133万円。月に1,333杯、1日約44杯が必要になります。こうやって目標から逆算できるのが損益分岐点の強みなんです。
Chapter 3 損益分岐点を下げる3つのアプローチ
さて、損益分岐点がわかったら次に考えるべきは「どうやって下げるか」です。損益分岐点が低いほど、少ない売上でも黒字になる。つまり経営が安定するんですね。アプローチは大きく3つあります。
3つのアプローチ、ぜひ教えてください。さっきのラーメン屋さんの例で考えると、月100万円が分岐点でしたよね。これを下げられれば楽になるってことですよね。
はい。まず1つ目は固定費の削減。これが最も直接的です。さっきのラーメン屋で家賃交渉が成功して月5万円下がったとしましょう。固定費が55万円になるので、損益分岐点は55万円割る0.6で約92万円。月に920杯、1日約31杯で済む。たった5万円の削減で1日2杯分の余裕が生まれるんです。
おお、家賃が5万円下がるだけで1日2杯分の余裕ができるんですか。固定費の削減って地味に見えて効果が大きいんですね。
2つ目は変動費率の低減。仕入れ先を見直して材料費を400円から350円に下げられたら、変動費率は35%になる。損益分岐点は60万円割る0.65で約92万円。こちらも同じくらいの効果があります。ただし品質を落とすとお客さんが離れるので、仕入れルートの工夫や食材ロスの削減で実現するのが理想です。
安い材料に変えればいいって話じゃないんですね。品質を保ちながらコストを下げる工夫が必要なんだ。3つ目は何ですか?
3つ目は販売価格の引き上げです。ラーメンを1,000円から1,100円にする。変動費400円は変わらないので、1杯あたりの限界利益が600円から700円に増える。損益分岐点は60万円割る約0.64で約94万円。これも効果があります。ただし値上げは客離れのリスクがあるので、味やサービスの付加価値向上とセットで考えるべきです。
なるほど。固定費削減、変動費削減、値上げの3つをバランスよく組み合わせるのが大事なんですね。実務ではどれか一つだけじゃなくて、複合的にやるんですか?
そうですね。実務では3つの施策を組み合わせてシミュレーションします。「家賃を3万円下げて、材料費を20円削減して、価格を50円上げたら損益分岐点はいくらになるか」と。こうやって複数のシナリオを比較検討できるのが、損益分岐点分析の本当の価値なんです。
Chapter 4 よくある失敗と損益分岐点比率の目安
ここからは、損益分岐点に関するよくある失敗パターンを紹介します。意外なことに、一度計算したのに活かせていない経営者がとても多いんですよ。
計算したのに活かせていない?せっかく計算したのにもったいないですね。どういう失敗があるんですか?
一番多いのが、損益分岐点を一度計算して放置してしまうパターンです。原材料費の高騰や人件費の上昇で、損益分岐点は常に変動します。半年前の計算を使い続けると、気づかないうちに赤字ラインを下回っている危険があります。
それは怖いですね。物価も人件費も上がっている今の時代、半年前と同じ損益分岐点のはずがないですよね。
もう一つの失敗は、売上目標だけを追ってコスト構造を無視すること。売上を2倍にしても変動費率が高ければ利益はほとんど増えません。「忙しいのに全然儲からない」という状態は、実は損益分岐点を見ていれば防げる問題なんです。
あー、忙しいのに儲からないって、まさにそういうことだったんですね。ちなみに損益分岐点って、どのくらいの水準だと安心なんですか?何か目安はあるんですか?
いい質問です。損益分岐点比率という指標があります。これは損益分岐点売上高を実際の売上高で割ったものです。たとえば損益分岐点が80万円で実際の売上が100万円なら、比率は80%。一般的に80%以下なら安全圏、90%を超えると危険水域と言われています。
80%以下が安全圏ですね。逆に言えば、売上が2割減っても赤字にならない体質ということですよね。これは心強い指標です。
その通りです。景気の変動やコロナのような予測できない事態もありますから、常に余裕を持った経営をするためにも、この損益分岐点比率を毎月チェックする習慣をつけることをおすすめします。
Chapter 5 クロージング ── 明日からできるアクション
さて、今日は損益分岐点について、基本の計算方法から実務での活かし方、そしてよくある失敗パターンまで見てきました。最後に、明日からできるアクションをまとめましょう。
はい、ぜひお願いします。今日の話を聞いて、まず自分の事業で計算してみたくなりました。
まずステップ1、自社の費用を固定費と変動費に分類してみてください。完璧じゃなくて大丈夫です。ステップ2、損益分岐点売上高を計算する。固定費割る、1マイナス変動費率です。ステップ3、損益分岐点比率を出して、80%以下を目指す。この3ステップです。
3ステップならすぐできそうですね。そして定期的に再計算するのも忘れずに、ですよね。
その通り。損益分岐点は経営の羅針盤です。一度計算したら終わりではなく、毎月チェックして、環境の変化に合わせて戦略を調整していく。それが数字に強い経営者への第一歩です。
損益分岐点、今日でしっかり理解できました。リスナーのみなさんもぜひご自身の事業で計算してみてくださいね。それでは、また次回お会いしましょう!
ありがとうございました。次回もお楽しみに!