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Episode 90

衝突対応 ― 対立を組織の成長エンジンに変える技術

13分 5チャプター 日本語
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スクリプト

Chapter 1

オープニング ― 経営者の時間の20%は衝突対応?

タカシ

皆さんこんにちは、タカシです。今日のテーマは「衝突対応」、いわゆるコンフリクトマネジメントについてお話しします。ミカさん、職場で意見がぶつかった経験ってありますか?

ミカ

ありますあります!プロジェクトの進め方で同僚と意見が合わなくて、気まずい空気になったことがあります。正直、対立ってできれば避けたいなって思っちゃうんですよね。

タカシ

そう思いますよね。でも実は、驚くべきデータがあるんです。アメリカの調査によると、経営者は業務時間のなんと約20%を衝突の対応に費やしているそうなんですよ。

ミカ

えっ、20%!1日8時間だとしたら1時間半以上ですか?それはかなりの時間ですね。衝突ってそんなに頻繁に起きるものなんですか?

タカシ

ええ、しかもこれ、放置するとさらに悪化するんです。米国企業全体では年間約3,590億ドル、日本円で50兆円以上が衝突による生産性低下で失われているという試算もあります。今日は、この衝突をどうやって組織の成長につなげるか、一緒に考えていきましょう。

Chapter 2

衝突の3タイプとトーマス・キルマンの5つの対応スタイル

ミカ

まず基本的なところから聞きたいんですけど、職場の衝突って一言で言ってもいろいろな種類がありますよね?どう整理したらいいんでしょうか。

タカシ

いい質問ですね。衝突の原因は大きく3つに分けられます。1つ目は「条件の対立」。これはリソースや予算、納期といった物理的な制約をめぐる対立です。2つ目は「認知の対立」。同じ事実を見ても解釈が違うケースですね。3つ目が「感情の対立」。個人的な好き嫌いや過去の遺恨が絡むパターンです。

ミカ

なるほど。予算の取り合いみたいな話と、そもそも方針の解釈が違う話と、人間関係のこじれって、確かに全然性質が違いますよね。それぞれ対処法も変わるんですか?

タカシ

まさにそこがポイントです。1970年代に心理学者のトーマスとキルマンが「二重関心モデル」という理論を作りました。横軸に「自分の利害をどれだけ重視するか」、縦軸に「相手の利害をどれだけ重視するか」を置いて、衝突への対応を5つに分類したんです。

ミカ

5つですか。ちょっと多いですけど、具体的にはどんな分類になるんですか?

タカシ

順番にいきますね。まず「強制」。これは自分の主張を押し通すスタイルです。次に「服従」、相手に合わせて自分が引く。「回避」は対立から目を逸らす。「妥協」は双方が少しずつ譲り合う。そして最後が「協調」、双方の利害を最大化する解決策を一緒に探すスタイルです。

ミカ

へえ〜、妥協と協調って似てるようで違うんですね。妥協はお互い少し損するけど、協調は両方得する道を探すってことですか?

タカシ

その通りです。妥協は「50対50で分けましょう」という発想。協調は「そもそもパイを大きくできないか」と考えるんですね。経営の現場では状況によって5つを使い分ける必要がありますが、中長期的にはこの「協調」を目指すのが組織にとって最も健全だと言われています。

Chapter 3

実務の事例 ― 営業vs開発、よくある部門間対立をどう解決するか

ミカ

理論はわかったんですけど、実際の経営現場ではどんな場面で衝突が起きるんですか?具体的な例を聞いてみたいです。

タカシ

よくある典型例をお話ししますね。営業部門が「お客様の要望に柔軟に対応したい」と主張し、開発部門が「仕様変更は品質の低下を招く」と反発する。これ、実は多くの会社で起きている条件の対立なんです。

ミカ

あ〜、それすごくイメージできます!営業からすると「お客さんが言ってるんだから対応してよ」って思うし、開発からすると「また急に変えるの?」ってなりますよね。

タカシ

まさにそうなんです。ここで経営者がやりがちな失敗が、どちらか一方に肩入れすること。例えば「お客様第一だから営業の言う通りにしよう」と決めてしまうと、開発チームのモチベーションが一気に下がるんですね。

ミカ

それって「強制」のパターンですよね。じゃあ、この場合の「協調」ってどういう解決になるんですか?

タカシ

素晴らしい、まさにそうです。協調的に解決するなら、まず双方の主張の背景を丁寧に聴きます。すると「顧客満足度を維持したい」と「品質を確保したい」という、実は共通のゴールが見えてくる。その上で、例えば「仕様変更の受付期限ルールを設ける」といった、両方の利害を満たす仕組みを一緒に作るんです。

ミカ

なるほど!対立しているように見えて、実はゴールは同じだったんですね。共通のゴールを見つけるっていうのがすごく大事なポイントな気がします。

Chapter 4

よくある失敗パターンと新任マネージャーの現実

タカシ

ここからは経営者がやってしまいがちな失敗パターンについてお話しします。実は多くの経営者が、衝突対応で同じ落とし穴にはまるんですよ。

ミカ

落とし穴ですか。さっきの「一方に肩入れする」以外にもあるんですか?

タカシ

一番多いのが「回避し続ける」パターンです。衝突を見て見ぬふりをするんですね。「まあそのうち落ち着くだろう」と放置する。でもこれが一番危険で、不満が地下に潜って蓄積し、ある日突然、離職や大きな対立爆発として表面化するんです。

ミカ

うわ、それ怖いですね。表面上は平和に見えるけど、実はみんな我慢してるだけで、突然人が辞めていくみたいな。

タカシ

もう1つよくあるのが、経営者自身が感情的に介入するケース。怒りに任せて「もうこれで決まりだ!」と裁定を下してしまう。これをやると公平性が損なわれて、組織全体の信頼の土台が崩れます。

ミカ

経営者も人間ですからイラッとすることはありますよね。でもそこで感情を出しちゃうと逆効果なんですね。ちなみに、新しくマネージャーになった人ってどのくらい衝突対応に苦労してるんですか?

タカシ

DDIという調査機関のデータによると、新任マネージャーのなんと49%が衝突対応を苦手としていて、高いスキルを持っていると評価されたのはわずか12%だったそうです。つまり、半数近くの管理職が衝突にうまく対処できていないんですね。

ミカ

49%!ほぼ半分じゃないですか。これは個人の能力の問題というより、ちゃんと学ぶ機会がないってことなのかもしれませんね。

タカシ

おっしゃる通りです。さらに興味深いのは、衝突対応の研修を受けた人の95%が「研修が問題解決に役立った」と回答しているんです。つまり、学べば確実に上達するスキルなんですよ。センスじゃなくて技術なんです。

Chapter 5

クロージング ― 明日から使える衝突対応の5ステップ

ミカ

今日のお話、すごく勉強になりました。最後に、リスナーの皆さんが明日から実践できるアクションをまとめてもらえますか?

タカシ

はい、5つのステップにまとめますね。まず第1に、衝突が起きたら「何について対立しているのか」を切り分けてください。条件の対立なのか、認知の対立なのか、感情の対立なのか。これを間違えると、的外れな対処をしてしまいます。

ミカ

まず原因の分類ですね。確かに、予算の問題なのに感情的に話し合っても解決しないですもんね。

タカシ

第2に、当事者双方の話を個別に聴くこと。いきなり全員を集めるのではなく、まず一対一で事実と感情を分離しながらヒアリングします。第3に、共通のゴールを言語化して全員で確認する。対立の裏にある「本当に大事にしたいこと」は意外と一致しているものです。

ミカ

個別に聴いて、共通ゴールを見つける。さっきの営業と開発の例がまさにそうでしたね。残りの2つは何ですか?

タカシ

第4に、解決策は当事者同士に考えさせること。経営者はファシリテーターに徹して、答えを押し付けない。自分たちで決めた解決策の方が、納得感も実行力も格段に高くなります。そして第5に、衝突対応のルールや研修を組織として整備すること。属人的な対応では品質にばらつきが出ますから。

ミカ

衝突を避けるんじゃなくて、ルールを作って正面から向き合う仕組みを作るんですね。今日一番の学びは「衝突は成長のチャンス」ということでした。皆さんの職場にもきっと心当たりがあると思うので、ぜひ今日の5ステップを試してみてください。

タカシ

ですね。衝突はセンスではなく技術で対処できます。今日のエピソードが皆さんの経営に少しでも役立てばうれしいです。それでは、また次回のエピソードでお会いしましょう。ありがとうございました!

ミカ

ありがとうございました!次回もお楽しみに!